労務コンプライアンスって?何から始める?「3つのステップ」で考える優先順位

こんにちは、社会保険労務士の安生です。
昨今、「働き方改革」や社会情勢の変化に伴い、企業における「労務コンプライアンス(法令遵守)」の重要性が急速に高まっています。
しかし、いざ「コンプライアンスを強化しよう!」と思っても、労働法は範囲が広く、実際何から手をつければよいのか分からず途方に暮れてしまう経営者様や人事担当者様も多いのではないでしょうか?
今回は企業規模に関係なく取り組むべき「労務管理の優先順位」について触れていきたいと思います。
ステップ1「労働基準監督署調査」
まず最優先で取り組べき労務管理は労働基準監督署の調査です。
これは「労基署の調査が入っても問題ない状態」を目指す、最も基本的かつ重要なレベルです。
監督署の調査では、実はそこまで細かい重箱の隅をつつくような指摘よりも、以下のような「基本中の基本」が見られる傾向にあります。
勤怠管理(労働時間の把握は適正に管理できているか?)
割増賃金(残業代は正しく計算・支払われているか?)
36協定(協定の締結・届出はされているか?)
就業規則(周知・届出はされているか?)
健康診断(毎年実施されているか?)
列挙してみるとどれも当たり前の労務管理ですが、多くの企業で意外とこの基礎部分に抜け漏れがあるのが実情です。
今一度自社の状況を確認してみましょう。
ステップ2「労働トラブルの未然防止」
ステップ1ををクリアしたら、次は「従業員とのトラブルを防ぐ」ための整備です。
ここでは、法律で決まっていることだけでなく「法律には明確な定めがないが、実務上トラブルになりやすい事項」に意識した整備です。
その代表例となるのが「休職制度」です。
休職は法律上の義務ではありませんが、メンタルヘルス不調などで長期欠勤する社員が出た際、「いつまで休めるのか」「復職の基準は何か」「期間満了で退職になるのか」が曖昧だと、大きなトラブルに発展します。こうしたリスクを回避するためのルール作りがこの段階です。
そして会社で定めたルールはきちんと就業規則に定めて従業員に周知することが必要です。
就業規則については10人未満の事業所は作成義務が無いため作成していない企業も多いかと思いますが、従業員とのトラブル防止の為にも就業規則の作成はしておくことをおすすめします。
ステップ3「労務監査(IPO・M&A)」
最後は、上場(IPO)や企業買収(M&A)などを目的とした、網羅的で厳格なチェックです。
いわゆる「労務監査(デューデリジェンス)」と呼ばれるもので、非常に細かい部分まで精査されます。しかし、これは明確な目的(上場など)がある場合に企業自ら自発的に行うものであり、中小企業がここまでの体制を目指す必要性は低いと言えます。
まずは「ステップ1」を完璧に
「コンプライアンス」と聞くと、いきなりステップ3のような完璧な状態を目指してしまいがちですが、それはマラソン初心者がいきなりフルマラソンを走るようなものです。
まずは「ステップ1」にある労基署対応レベルを徹底することをお勧めします。
なぜなら、ステップ1の項目(勤怠、給与、健診など)は、労使トラブルの火種になりやすい箇所そのものだからです。ここを整備するだけで、監督署対策になるだけでなく、従業員とのトラブルも大幅に減らすことができます。
【具体的なアクションプラン】
1. 現状把握: 自社の勤怠管理や残業代計算が、法律通り運用できているか再確認する。
2. 専門家の活用: 顧問社労士がいる場合は、「まずは労基署調査で指摘されないレベルまで基礎を固めたい」
と相談する。
3. 定期的な見直し: 勤怠システムなどを導入して安心するのではなく、運用が形骸化していないか定期的に
チェックする。
労務管理は一朝一夕にはいきませんが、優先順位をつけることで着実に前に進めることができます。まずは足元の「当たり前」を確実にこなすことから始めましょう。
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