就業規則は正社員用とパート用で分けるべき?作成時に知るべき判断基準

こんにちは、社会保険労務士の安生です。

就業規則を作成・見直しする際、「正社員用とパート・アルバイト用で規定を分けるべきか?」 と言うよく質問をいただきます。

今回は、就業規則を雇用形態ごとに分けるべきか、それとも一本化すべきかについて、それぞれのメリット・デメリットを整理し、自社に合った運用方法を選ぶための判断基準を解説します。

目次

法律上の決まりはあるのか?

まず大前提として、「正社員用とパート用を分けなければならない」という法律上の決まりはありません。 労働基準法では「事業場ごとに就業規則を作成すること」が求められていますが、雇用区分ごとに別冊にすることまでは義務付けられていないため、企業の判断で自由に決めることができます。

では、実際に運用する上でどのような違いがあるのでしょうか。

就業規則を「分けない(一本化する)」場合のメリット

正社員もパートも全員同じ1冊の就業規則で運用する場合の特徴です。

保管・閲覧がシンプル
書棚に保管する場合や従業員に周知する場合も、「就業規則はこれです」と1冊提示するだけで済むため、管理が煩雑になりません。

管理・改定が楽(最大のメリット)
法律の改正や社内ルールの変更があった際、1つのファイルを修正するだけで済みます。複数の規定があると、修正漏れや「正社員版は直したがパート版は忘れていた」といったミスが起こりやすくなりますが、一本化されていればその心配がありません。

就業規則を「分ける(別規則にする)」場合のメリット

「正社員就業規則」と「パートタイム就業規則」を別々に作成する場合の特徴です。

従業員の誤解を防ぐ
パート社員が自分に関係のない正社員用の条文を見て、「自分もこの手当がもらえる」と誤解するトラブルを防げます。パート社員は自分用の規則だけを見れば良いため、内容が分かりやすくなります。

「適用間違い」のリスクを減らせる
例えば、退職金や特別休暇など、正社員には適用されるがパートには適用されない制度がある場合、規則を分けていれば明確に区別できます。

専門家と実務担当者の視点の違い

弁護士や社労士(リスク管理の視点)
「分けたほうが良い」とアドバイスすることが多い傾向にあります。理由は、一本化した規則の中で「ただしパートには適用しない」といった除外規定を書き忘れると、会社にとって予期せぬ支払い義務(リスク)が発生するためです。

会社の実務担当者(運用の視点)
日々の事務負担を考えると、「分けたくない」と考える方が多いです。規則が増えれば増えるほど、改定作業の手間も増えるためです。

まとめ:自社に合ったスタイルを選ぼう

どちらが正解ということはありませんが、選ぶ際のポイントは以下の通りです。

  • 事務負担を減らしたいなら「一本化」
    ただし、正社員のみに適用する条文には必ず「本条はパートタイマーには適用しない」といった記載を漏れなく行うよう、細心の注意が必要です。
  • リスク管理を重視するなら「別規則」
    手間はかかりますが、雇用形態ごとの待遇差を明確にし、無用なトラブルを確実に防ぎたい場合は分けることをおすすめします。

自社の人員構成や管理体制に合わせて、最適な運用方法を検討してみてください。

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