【要注意】「形だけ」の過半数代表者選任が“書類送検”に? 36協定・就業規則の重大リスクとは

こんにちは、社会保険労務士の安生です。
先月、就業規則の変更の際に「過半数代表者」の選出手続きに不備があったとして、企業が書類送検されるという報道がありました。
これは珍しいケースとされていますが 、多くの企業にとって人事労務上の大きなリスクを浮き彫りにしています。
今回は、この「過半数代表者」の選任に潜むリスクと、正しい手続きの重要性について解説します。
過半数代表者とは? なぜ重要か?
労働組合がない企業(多くの中小企業が該当するケースが多いと思います)では、以下のような労使協定を結ぶ際、従業員の「過半数を代表する者」の意見聴取や、その代表者との協定締結が必要です。
・時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)
・就業規則の作成・変更(特に不利益変更の場合)
この過半数代表者は、法的に従業員側の意見を集約する重要な役割を担っています。
多くの企業が陥る「形だけ」の選任
問題となるのは、この代表者の選出プロセスです。
実際には、多くの企業で以下のような不適切な選任が「おざなり」になっているケースが見受けられます。
・会社による指名: 会社側が「言いやすい人」や特定の従業員を一方的に指名してしまう
・形骸化した選任: 毎年決まった人が自動的になるなど、実質的な選出手続きを踏んでいない
・管理監督者の選任: 本来代表者になれないはずの「管理監督者」を選んでしまっている
手続き不備がもたらす「2つの重大リスク」
【リスク1】司法処分(書類送検)
今回の報道で明らかになったように、手続きの不備が労働基準監督署の調査で発覚した場合、悪質と判断されれば「書類送検」という司法処分に至る可能性があります。
【リスク2】協定・就業規則の「無効」
こちらが企業経営にとってより深刻なリスクかもしれません。不適切な手続きで選ばれた代表者と締結した36協定や、変更した就業規則は、法的に「無効」と判断される可能性があります。もし36協定が無効になれば、従業員に残業を命じる法的根拠そのものが失われることになります。
リスク回避のために「正しい」選出方法
では、どうすればよいのでしょうか。最も重要なのは、代表者選出が「民主的な手続き」によって行われたと証明できることです。
・選出方法の明確化: 投票、挙手、従業員間での話し合い(合意)など、選出方法を明確にします。
・全従業員への周知: 代表者を選出する目的を明らかにし、全従業員に手続きへの参加機会を与えます。
・民主的な実施: 会社側が介入・指名するのではなく、従業員が主体となって選出プロセスを実施します。
まとめ
36協定の更新時期(例えば1月1日更新など)や、育児・介護休業法の改正対応など、労使協定や就業規則に触れる機会は定期的に訪れます。
「最後の工程」である代表者選任の手続きを面倒くさがらず今一度自社の業務フローを見直し、法的に有効な状態を確保することが、将来の大きなリスクを防ぐ鍵となります。
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